日本人のメダルラッシュとなった東京オリンピック!!!
実は、これまで連載してきたお話はオリンピックと深い関係があるんです。
ドイツ(旧東ドイツ)発祥のコオーディネーショントレーニングは、オリンピックで金メダルを大量に獲得しよう!という国策がそもそものはじまりでした。
結論、東ドイツとして出場していた大会では、大国ソ連に続く第2位の金メダル獲得数(1大会47個)という結果を残しています。
※出場選手数で見ると、実質1位
この、世界一になるための研究や実践から解き明かされたのがコオーディネーション理論・コオーディネーショントレーニングで、現在では、選手育成をはじめ、子供や高齢者の運動、障害を抱えた方の運動など幅広く応用されています。
■いよいよ最終回
これまでの連載では、運動神経の良し悪しのカギは遺伝ではなく、コオーディネーション能力と呼ばれるものにあり、その中身についてお話してきました。
全部で7つあるうちの定位能力、リズム化能力、分化能力については、これまでお話した通りです。
第7回目の今回は、反応について。
これまでの記事でもチラッと出ているので、なーんだ、簡単じゃん!と思った方もいるかもしれませんが、反応には大きく分けて2種類あるのをご存じですか?
1つは、陸上の100M走や水泳など、「よーいドン!」の合図に素早く反応するもの。
もう1つは、サッカーのPK(ゴールキーパーの立場)や野球のイレギュラーバウンド、バレーボールや卓球のネットインに対する反応などです。
良いスタートを切って、1歩リードするためにも
PKでナイスセーブするためにも
瞬時に対応してナイスプレイを連発するためにも
ボクシングや柔道で相手の動きをかわし、次のチャンスに繋げるためにも
大事なものを落としそうになって壊さないためにも
様々なシーンで必要な能力になります。
だからといってスタートの練習やPKの練習ばかりを繰り返すのが良いとは限りません。スポーツを始める以前の幼少期に、鬼ごっこをしたりモグラたたきのようなゲームをしたりして、その土台を作っておくことがとても大切になります。
■ワンポイントトレーニング
ボールが手から離れたら、素早く取りにいく。
コオーディネーション能力の連結と変換については、他の能力との関連性が高いので、サクッとお話します。
連結については以前チラッとふれましたが、サッカーのシュートやバレーボールのアタックで上半身と下半身の動きを連動させることだったり、変換は野球のイレギュラーバウンドに反応して瞬時に方向を切り替える動作だったりします。
■コオーディネーション能力は人生も左右する?
コオーディネーショントレーニングの7つの能力についてお話してきましたが、大切なのは脳を最大限刺激し、全身をフル活用すること。ゲーム機の普及とともに指先の反応能力は格段に向上していますが、定位能力や分化能力は明らかに退化しているというデータもあるそうです。
日本の保育園を見ると、私の知る限りではハサミを使ったり、ぬり絵や折り紙などの Eye-hand coordination(目と手の協応)にばかり焦点が当てられているように感じます。
今後ますます、Eye-hand coordination ばかりが強化されて、全身のコオーディネーションは退化していく一方でしょう。この記事を読んだ皆さんがコオーディネーショントレーニングを広めてください。
最後に、コオーディネーション研究の初期から関わっているドイツ人指導者が興味深い話をしてくれたので紹介します。
「子どもの時にコオーディネーション能力を上げていれば、成人時に職業選択など様々なことに意欲的になるでしょう。しかし、子ども時代にコオーディネーション・トレーニングをしなければ、その子は将来、新しい何かにチャレンジする時、消極的になるでしょう。または、怖い、不安などの理由で回避行動をとるかもしれません。
生涯で、コオーディネーションが子どもの時にあれば、身体的にも精神的にも全て良い方向にいきますし、自信も高まります。そして様々な危険度も下がるのです。」(2020.03)
1人でも多くの方の、より良い人生を送るためのきっかけになれば幸いです。