第1回「子どもが苦手なことからすぐ逃げてしまう」親や他人に決められたことは逃げ道になる

第1回「子どもが苦手なことからすぐ逃げてしまう」親や他人に決められたことは逃げ道になる mental

子どもが「夢を持ってもすぐに諦めてしまう」「自分なんてと自分を否定してしまう」「嫌なことからすぐに逃げ出してしまう」、こういう時にどう対処すべきなのか、お子さんがスポーツをしている保護者のみなさんには悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

子どもが自分に自信を持ち、スポーツの本番に強い精神力を養うにはどうすればよいのか。 スポーツメンタルトレーナーとして子どもたちをサポートする清水利生さんに全3回にわたって事例別に伺いました。

“練習から逃げ出したい” ハルカさん(小学校6年生)の例
ハルカさん(仮名)は、小学3年生の頃から姉が通う卓球教室に一緒に行き始めました。姉の背中を追いかけて頑張っていましたが、なかなか上達できず、次第に練習を休みがちになっていきました。
ハルカさんは諦め癖がつき、「帰りたい」とすぐ逃げてしまうのです

親がやらせたいことをやらせていませんか?

私がメンタルトレーナーをしている中で、「子どもが苦手なことからすぐ逃げてしまう」という悩みを抱えている保護者の方は多いです。その根本には、子どもが「自分でやりたいと選択したのではなく、他人(親)が選択したことをやっている」という前提があるのではないかと感じています。

親や指導者から言われることや与えられたことは、都合が悪くなると、すぐに他人のせいにしやすいものです。それは、「自分が選択したことではない」という前提が逃げ道になってしまっているためです。

この例のハルカさんに理由を聞くと、やはり、最初から好きで始めたわけではないし、特に目標もありませんでした。話を聞けば聞くほど「なぜ卓球をしているのだろう?」と、こちらが疑問に思うくらいでした。

お母さんは卓球を好きになってほしいと考えていたようですが、すぐに好きになるのは難しいものです。 ハルカさんには、卓球を使って成功体験を積んでもらい、自信を育てることの楽しさを実感してもらおうと考えました。

第1回「子どもが苦手なことからすぐ逃げてしまう」親や他人に決められたことは逃げ道になる

「自分との約束」=「インサイドルール」を決めよう!

まず取り組んでもらったのは、自分で決めたことをやり抜くという経験でした。ハルカさんにはこれだけはやるという「自分との約束」を決めてもらいました。ハルカさんが決めた約束は、
「うまくいかなくても練習は休まない」ということでした。

「好きになる必要はない。練習に行き続けると言う、自分で決めた約束は守ろう」
と、約束を交わしました。

彼女と再会した半年後、ハルカさんは中学生になっていました。彼女は卓球部へ入ったとのことでした。ハルカさんは、
「自分との約束を守っているうちに、嫌なことに耐えられるようになった」
と、話してくれました。自分で決めたことを逃げずにやり続ける経験を積み、自己肯定感が育まれていったのです。

この自分との約束を「インサイドルール」と私は呼んでいます。これまでサポートした選手の中には、
「試合前に必ず部屋の掃除をする」
「毎朝5時に起きる」
といった、プライベートな内容のインサイドルールを設定していた例もあります。

インサイドルールは「壁を越えることができる」という人間力を育てる力があります。
「めんどくさい」「嫌だな」と感じるような内容をオススメします。競技面でも、生活面でも構いません。

インサイドルールをきっかけにして、逃げそうなことに対しても、クリアしていけるメンタリティを作っていきましょう。この対策は将来壁にぶつかったとき、 逃げずに立ち向かっていける自信を構築するものだと考えています。

下のノートのように、自分の感情、思考などを文字にして書き出すことで、心を整理することができます。ぜひ実際にノートに書き出して見て、自己肯定感を育んでいきましょう。

第1回「子どもが苦手なことからすぐ逃げてしまう」親や他人に決められたことは逃げ道になる
プロフィール
第1回「子どもが苦手なことからすぐ逃げてしまう」親や他人に決められたことは逃げ道になる

清水 利生 (しみず・としき)
1985年山梨県生まれ。山梨県立韮崎高校卒業。山梨学院大学を中退しプロフットサル選手として29歳までプレー。引退後メンタルトレーナーに転身。スポーツ心理学、大脳生理学を用 いてアスリートを中心にサポートし、企業の社員研修講師も務める。現在プロスポーツチームのサポートをはじめ 、オリンピック選手やW杯出場選手など日本を代表する選手たちのサポートを行う。これまでに、500人を超える日本のトップアスリートを結果につなげている。ジュニア育成「パンケーキプロジェクトR」では、年間延べ2,000人を超える子どもたちをサポートし自己肯定感を育てる活動を広げる。株式会社43Lab代表取締役。
https://43lab.com/

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