「なんでも親まかせ、他人まかせ。自分で考えて行動をしてほしい」
無責任であると知りながら、こんな風に思ってしまった経験はないでしょうか。
では「子どもたちにどんな言葉をかけるのが正解なのだろう?」
優しい言葉、厳しい言葉、それとも多くを伝えないことなのだろうか? 何気ない一言が、子どもたちに大きな影響を与えてしまうのです。 ですが、そこにたった1つの正解があるのではなく、
自分らしい答えを見つける手助けをしてあげることが大切なのです。
言葉が与える影響を理解することが、子どもたち自らが考え、行動する力を生み出すきっかけとなります。
子どもたち選手の行動は私たち大人の「言葉」が鍵。
私たち大人も子どもたちも否定された言葉を耳にすると、心理的にその行動をしたくなるものです。「絶対開けないで!」と言われれば開けたくなりますし、「ミスするな!」と言われれば、ミスを頭の中でイメージして、無意識にミスをする可能性が高まります。
その理由は、人間の脳は「否定語」を理解できないといわれているからです。
「ミスをしないように」
「失敗しないように」
「遅刻をしないように」
というような「~しない」という否定語に対して、
「ミスをする」
「失敗をする」
「遅刻をする」
という内容を受け取ってしまうというのです。
すると、悲しいことに、「しないようにしよう」と思ったことが起こりやすくなってしまいます。
「大事な場面でシュートを外さないでね。」
そう言葉をかけられた選手は残念ながら「シュートを外す」ことをまず、頭の中でイメージしてしまいます。こうした現象を心理学では「否定命令」といいます。
子どもたちが大好きなヒーローショーでは「ちびっ子に否定語は使わない」という教えがあるそうです。
・「立たないで」ではなく「座って見てね」
・「走らないで」ではなく「ゆっくり歩いてね」
・「しゃべらないで」ではなく「静かに見てね」
言葉を変えることが、子どもたちの行動を変える一歩となります。
自分自身が口にしている「否定的な言葉」に気づいたら、「肯定的な言葉」に直していきましょう。
・遅刻するな、ではなく
・時間に余裕を持ってきてね。
・シュート外すなよ、ではなく、しっかり決めよう。
子どもたち選手と一緒に、言葉を変え、行動に変化を起こしましょう。
子どもたちの主体性は「なぜ?」からはじめよう
私たち大人は子どもたち選手に対して、自分で考え、物事に主体的に取り組んでほしいと思っているもの。けれど、指示や命令に慣れている子どもたちは、なかなか自分で率先して動けないことも多いかもしれません。
それを解決するために、彼らが自分自身に問いかけたい質問は、
「なぜ、これをやるんだろう?」
「なぜ?」の答えが明確なほど、自ら課題を発見し解決に糸口を探り、成果をあげることができます。
私の知人で英会話の講師の方がいます。多くの受講者の方々が、「今年こそ英語を喋りたい!」と、彼のもとに集まるそう。けれど、多くの方が
「なんとなく」
「喋れたら格好いいから」
「ビジネスに使えるから」
と、「なぜ?」の答えが曖昧なまま受講し、途中で挫折してしまうというのです。
子どもたち選手にもおなじことが起こります。
「日本一になる」
「全国大会に出場する」
「毎試合、1点取る」
目標を立てるも、どこか上の空。主体性を発揮するために大切なことは、「なぜ、それを実現したいのか?」という問いかけの答えを持つこと。そうすることで練習の質をあげ、試合で実力を発揮する最大の力になります。
「なぜ」への理由は、貧しい人のためというものではなくても構わない。しかし、知的でも、道徳的でも、政治的でも何であれ「だから自分はこれをやる」という明確な自覚を持ちたいものです。
ーアマーティア・セン(インド人経済学者)
習慣は怖いもので、最初は明確だった思いも、時間が経つにつれ、「なんとなく」にすり替わっていきます。
練習も、 試合も、学校の授業も、練習日誌も、最初の頃の新鮮な気持ちがいつしか「なんとなく」にすり替わってしまいます。
「なぜ、これをやるんだろう?」
「なぜ、この目標を達成したいんだろう?」
「なぜ、その未来を実現したいんだろう?」
物事に主体的に取り組む第一歩として、自分なりの理由に触れる問いかけをしましょう。
◎「しつもん」で夢中をつくる! 子どもの人生を変える好奇心の育て方
藤代 圭一 著
出版社名:旬報社
発行年月:2020年4月28日